ぼくの脳のなかを這い回るなにかに囁かれて、目の前の“彼”に手を伸ばした。
白い喉に指をかけてぎゅうと力を込める。
彼はなにも言わない。抵抗もしない。ただ、暗闇を引き連れたような黒い瞳をこちらに向けている。ぼくの脳のなかにいるなにかの存在を見透かされている気がして、こわくなったぼくは彼の首から指を剥がした。
ひゅう、気管に深く空気を取り込む音をさせて彼が咳き込む。うっすらと涙で滲んだ黒色が瞬いた。
「ヒュウガ。おまえは、みえているのか?」
「私には、私の瞳に映るものしかわかりませんよ」
「……みえていないのか」
「あなたが見つけてほしいものは、生憎と」
安堵、失望――或いは寂しさ。
なにかが抱く憎悪と懇願が悲鳴になってまた少しぼくを喰らう。今にも叫びだしそうなぼくはどんなかおをしているんだろう。
「カール」
やさしい、やさしい音。
顔をあげると黒色と目が合って、しかしその視線が辿る輪郭は“ぼく”ではないのだと気がついた。
「カーラン・ラムサス。私は、貴方は、此処にいますよ」
ただの少年でしかないぼくは彼の唇が形づくった名にどうしようもなく泣きたくなって。
彼の言葉の意味にはついぞ気がつかなかった。